2022/12/31 11:19


・「怪獣8号」との出会い

「怪獣8号」という作品でグラスをつくれないかと相談を受けた時、どういった作品なのだろうと思いました。早速その日の夜のうちに電子書籍で購入し読んで見ると、とても面白い!
読み進めていくうちに、「怪獣8号」の読み切りが面白いと話題になっていたのを思い出しました。

話題を耳にした時からの空白の期間を取り戻すかのように読み耽り、すっかり「怪獣8号」の虜になっていました。


・デザインの選定

グラス用のデザインを決めるに当たって幾つかの候補が有りました。
松本直也先生の絵はどれも素晴しいのですが中でも怪獣百景というコンセプトで描かれたデザインは特に素晴らしいのです。と、語り出す企画担当者様の目は少年のようにキラキラと輝いていました。
ああ。この方は「怪獣8号」の担当と同時に一人のファンとして深く愛しているのだな。凄い熱量だ。
昭和の最後に生まれた自分と年も近く、同じ漫画世代としてこの熱量に全力で応えたいと思いました。
そこから企画担当者様と二人三脚で、「怪獣8号」星詠み切子の実現に向けた長い闘いが始まりました(笑


・「怪獣8号」星詠み切子<七宝紋>が生まれた経緯

私がこれまで制作してきた作品の中に『星詠み猫+七宝紋/切子』というものがあります。
数年前に次のテーマは星空と猫にしたいと考えた時、中学の授業で星が弧を描いている写真に感激した事を思い出したのです。
満天の星空と星の軌跡、中心にある北極星を見据えた猫の後姿。足元には降り積もった星屑の丘。
好きな要素を散りばめたこの作品に、有り難くも今回の企画担当者様が惚れ込んで下さりました。

偶然にも怪獣百景の中で星空を見上げている怪獣8号の絵があり、
この絵と星詠み猫を融合させられないかとご提案頂いた時は吃驚しましたがそれと同時に心が躍りました。

━━━融合したらどうなるのだろう?━━━

松本直也先生の素晴らしくも美しい絵を忠実に再現したかったので彫刻可能な部分は全て拾っていきました。
グラスの底という限られたキャンバスに怪獣8号、電柱、星空を詰め込みました。

何度も打ち合わせを重ね、星詠み猫を元にアレンジした「怪獣8号」星詠み切子専用の星の軌跡をデザイン案に盛り込み提出しました。
無事に版元様から許諾が出ました。後に大変好評だったと聞いて嬉しくなりました。

今回の企画担当者様の熱い思いが無かったら、「怪獣8号」星詠み切子<七宝紋>は生まれ無かったでしょう。



   夕焼け色のガラス(瑠璃+オレンジ)

可夜硝子の代表色でもある夕焼け色のガラス(瑠璃+オレンジ)は特別仕様で国内にいる熟練の吹きガラス職人によって生み出されています。
工芸用の被せガラスと呼ばれるもので、通常のガラスとは全く別物です。
オレンジのガラスの上に瑠璃色のガラスが薄く被さっており、表面を砂や切子で削り出すとオレンジ色が現れます。
絵付けではなく彫刻でデザインを表現しています。
プリント、絵付けであれば数十年も経つと性質上劣化していきますが、彫刻したガラスは割れなければ永遠にその形を保ちます。
後世に残る作品という点に拘り、被せガラスに彫刻という手法を選んでいます。

2015年よりこの色で夕焼け猫グラス等を創り続けています。
当時はまだ個人の作家がこの特別な色を扱える時代では無かったのですが粘り強く交渉し続け、ついには認めて貰った経緯が有ります。
この恋焦がれた美しい夕焼け色(瑠璃+オレンジ)のガラス作品を、是非手にとって眺めてほしいです。



 何故砂彫刻と切子を融合させるに至ったのか

私自身はガラスに携わっている事もあり、切子を知っているのでとても好きです。
ですが同年代の周りの人、とくに若い世代の中で切子を持っている人はどれ程いるでしょうか。
名称自体知らない人もいるかもしれません。
2015年から砂彫刻で猫グラスをつくり続けているうちに、初めて自分用の特別なグラスを買ったというお声を頂く様になりました。
砂彫刻だけではなく、切子と融合させたらどうだろうとふと思いついたのです。
融合した作品をきっかけに切子の魅力に気付いてくれたら良いなと。そこから砂彫刻+切子が融合した作品作りが始まりました。